相談事例 叔父から遺贈を受けましたがどうすればよいですか?
相談者A65歳 「先日叔父が亡くなり遺言に叔父の不動産Bを私(A)に遺贈すると記載されていることが分かりました。叔父には子が1人いて長男夫婦とその不動産Bで同居していました。しかし叔父とその長男夫婦はあまり仲が良くなっかようです。私と叔父は比較的良好な付き合いだった為、遺言で私に不動産Bを遺贈したようです。
私は現在貸家暮らしで経済的に苦しい生活を送っており、本心では遺贈を受け入れたいが、いとこ(長男夫婦)が不動産Bに居住していているし、また、いとことの関係上遺贈を受け入れてよいのか悩んでいます。何かアドバイスを頂けますでしょうか?」
本心では遺贈を受けたい
A様は経済的に苦しい生活をしており遺贈を受けたいが人間関係や建前上遺贈を受けられないとおっしゃっていました。
確かにA様は叔父に対して、介護や特別な貢献はされておらず道義上財産の遺贈を受けるには苦しい立場にいることは確かです。
仮に、遺贈を受け入れて不動産を取得した場合そこに居住している長男夫婦はどうなるのでしょうか。
遺贈を受け入れた場合の長男夫婦
A様が遺贈の不動産を受け入れて取得した場合、そこに居住していた長男夫婦はどうなるのでしょうか。まず長男夫婦は父の所有する土地の上の家屋に無償で住んでいました。つまり使用貸借契約によって居住していたことになります。ではいつまで長男夫婦はその不動産に居住できるのでしょうか。
判例(最高裁平成8年12月17日)
「共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは,特段の事情のない限り,被相続人と右の相続人との間において,相続開始時を始期とし,遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認する」
上記判例は遺産分割終了までとしており遺贈の場合と異なりますが、A様が不動産登記が完了するまでを終期として使用貸借権は終了としても良いのではないでしょうか。
不動産登記上の難点
A様はその不動産を遺贈により取得した場合、その不動産登記はA様単独ではできません。遺言執行者、いなければ遺言者の相続人全員となります。
今回のケースですと遺言に遺言執行者は指定されていません。そのため唯一の相続人である長男が登記に協力しない場合も考えられます。その場合は家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立ててください。基本的には法律専門職が指定されますので、その執行者と登記を行ってください。また、遺言執行者の選任申立をする際は、申立書に「遺言執行者候補者」を書くこともできます。このとき受遺者ご自身を、遺言執行者候補者にしても差し支えありません。受遺者が遺言執行者に選任されれば、他人の協力を得ること無く1人で遺贈による登記申請ができることになります。
長男の遺留分の問題
唯一の相続人である長男には相続財産の1/2の遺留分があります。今回のケースでは相続財産は預貯金等ほとんど無く不動産のみとのことですので、仮にA様が不動産を取得した場合それに納得いかない長男は財産の1/2をA様に請求することができます。この遺留分請求権は金銭債権となりA様は長男に金銭をもって支払わなければならないということになります。
前述の通りA様には金銭的余裕がないため不動産を取得しご自身が住まわれるとなった場合は、長男からの遺留分侵害額請求にたいして金銭の支払いをすることが困難です。
A様の希望では遺贈を受けた不動産に居住したいようでした。そのため方策としては遺贈を受けた不動産を担保に借入することも考えられますが、高齢で無職の為、通常の銀行借入は難しいように思います。ですので、リバースモーゲージをご提案しました。
リバースモーゲージは、高齢者が自宅を担保にしてお金を借りることができる住宅ローンの一種です。毎月の支払いは利息のみで、ご利用中は元本の返済はありません。老後生活中の支出を減らすことができます。
別の案として、現在賃貸住宅への賃料分が浮きますのでその浮いた部分を支払いに充てることも可能です。
しかし、実際問題として遺留分を請求された場合、A様の心理的負担などは相当なもので、なかな大変ではないかと思われます。現実的には弁護士に間に入ってもらい遺贈を放棄する引き換えに長男からある程度の金銭の負担をしてもらうのもありなのではないでしょうか。以上をアドバイスさせていただきました。