相続でよくある誤解
1.遺産は法定相続分通りに分けなければならない
これは誤解です。遺産は遺言書があれば、遺言者の意思に沿って分けることができます。遺言書がなくても、相続人同士で話し合って協議分割することが可能です。法定相続分は、遺言書や協議分割がない場合に適用される最終的なルールです。
2.相続放棄は財産だけを放棄することができる
これも誤解です。相続放棄は財産だけでなく、債務も一括して放棄することを意味します。相続放棄をした場合、法律上、はじめから相続人でなかったものとみなされ、被相続人の財産や債務に一切関わることができません。
相続放棄は、相続開始を知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。
3.自筆証書遺言だけでは効力が発生しない
これも誤解です。自筆証書遺言は被相続人自身が全文を手書きして日付と署名・押印をした文書です。自筆証書遺言は公正証書遺言や秘密証書遺言と同じく正式な形式的要件を満たす有効な遺言形式です。自筆証書遺言だけでも効力が発生しますが、形式的要件を満たす必要や法律的文章は独特の意味をもっていたり解釈があるため一般の方が乏しい知識で作成した場合、無効と判断されたり残された相続人から意思とは異なった解釈をされる場合があるので注意が必要です。
4.相続は自動的に配偶者や子供に行く
相続は法律によって規定されていますが、自動的に配偶者や子供に行くわけではありません。法律によって法定相続人、法定相続分などがあり、遺言がなければ一般的にそれらに基づいて遺産分割することが多いです。しかし、法定相続分については遺産分割協議によって相続人全員の合意があれば自由にその割合や相続する財産を決めることができます。
5.遺言があれば相続人の意見は無視される
遺言があれば優先されますが、相続人の全員の合意があれば遺言によらず遺産分割することが可能です。ただし法定相続人以外の受遺者がいる場合その方の同意が必要です。
6.相続税は必ず支払わなければならない
相続税は、相続財産の価額に応じて課税される税金です。相続財産の価額が一定額以下であれば、相続税は課せられません。「3000万円+600万円×相続人の人数」最低でも3600万円以下の相続財産であれば相続税は課税されません。 また、相続人が特定の条件を満たす場合には、相続税の減免措置が適用されることがあります。相続税の詳細については、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
7.離婚した妻にも相続権がある
一般的には、 離婚した場合、元の配偶者には相続権はありません。しかし、元の配偶者との間に子どもがいる場合、その子どもは法定相続人となります。つまり、元の配偶者は直接相続できなくても、子どもを通じて間接的に相続する可能性があります。
ただし、遺言書がある場合は、遺言書の内容に従って相続が行われます。遺言書で子どもの相続分を減らすことや取り消すこともできます。ただし、遺留分という最低限の取り分を請求する権利はあります。