亡くなった母の預金が引き出せません。
ご質問頂きました。葬儀費用を支払うため母の銀行口座から預金を引き出そうとしましたが口座が凍結されて引き出せません。友人の親が亡くなった時は引き出せたと言っていましたが、なぜうちの母の口座は引き出せないのですか?
銀行手続きについて解説していきます。
死者の預金口座は引き出せるのか
銀行は、契約者の死亡を知るとただちに、口座を凍結し、一切の入出金ができないようにします。逆をいうと銀行が契約者の死亡を知らないと口座は凍結しないままとなります。つまりキャッシュカードと暗証番号が分かれば預金の引き出しができてしまうのです。今回の相談者様は、すでに預金口座が凍結されていたとのことですので、銀行側が何らかの情報でお母さまの死亡を知り預金口座の凍結をされたものと思います。
昔は預金を引き出せた?
ご相談者の友人が同じケースで預金を引き出せたというのは、以前は預貯金は法定相続の割合で当然に承継するとされていたからです。ですから相続人の持分については預金を引き出すことが可能な時代がありました。
しかし、最高裁平成28年12月19日判例によって、預金についても当然に承継されず遺産分割の対象となりました。そのため各銀行では遺産分割の成立していない預金口座について凍結することになりました。
葬儀費用の支払いはどうすればよいのか
上記のとおり遺産分割協議を成立しなければ預金の引き出しが原則できませんが、近々に被相続人にまつわる支払いがある場合どうすればよいのでしょうか。
実はそういった場合を想定した法律がございます。民法909条の2に規定されている遺産分割前の預金払い戻し制度です。
相続開始時の預貯金債権額×1/3×払い戻しを求める共同相続人の法定相続分(各銀行150万万円まで)
例 3000万円×1/3×1/4=250万円
250万円は各銀行の150万円の上限を超えているため150万円がまでが引き出し可能額となります。
この上記のように引き出すことができますので、支払い等に充てることが可能です。引き出し限度額は各銀行150万円までとなっていますので、複数の銀行に預金がある場合それぞれに150万円を上限として引き出すことが可能です。
また、遺産分割協議において、引き出された預貯金もいさんとして遺産分割の対象となり、この分割に際しては、引き出された預貯金分はその権利を行使した相続人が既に受け取ったものとされます。
銀行手続き書類
相続で銀行預金引き出しに必要な書類について下記を参考ください。
必要な書類は、遺言書や遺産分割協議書の有無によって異なりますが、一般的には以下のようなものが必要です。
- 銀行所定の相続関係届出書など(手続きする人や相続人全員の署名と実印が必要)
- 故人の戸籍謄本または全部事項証明書(死亡が確認できるもの)
- 預金通帳やキャッシュカードなど(口座情報が分かるもの)
- 手続きする人や相続人全員の印鑑証明書
- 遺言書がある場合は遺言書と検認済証明書
- 遺産分割協議書がある場合は遺産分割協議書
また、法務局で「法定相続情報証明制度」を利用すると、被相続人の戸籍関係の書類と法定相続情報一覧図を作成・提出することで、複数の金融機関に同一の書類を利用できるという制度があります。
詳しくは各銀行にお問い合わせください。