相続人の所在がわかりません

2023.03.20
相続

被相続人が死亡した後、遺産分割協議によって遺産を分割しますが、遺産分割協議には全員の同意が必要です。しかし相続人のなかに行方が分からない方がいる場合もございます。そのような時どのようにすればよいのでしょう。

相続人を確定させる

まず相続人が誰なのか確定する必要があります。相続人でないのに相続人を思い込んでいる場合もよくあります。相続人を確定するには戸籍を収集します。被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得し被相続人の相続人が誰なのか確定させます。見落としがちなのが認知している子がいたり、前妻がいてその間に子供がいたという場合もあります。被相続人にとっては表沙汰にしたくなかったことが戸籍によって判明することがあります。

また、遺産のすべてが遺言によって包括遺贈されている場合は、所在不明者を捜索する必要はありません。ただし、遺産の一部のみ包括遺贈されている場合については、包括遺贈の対象外の遺産については遺産分割協議の必要があるので所在不明者の捜索が必要です。

相続人が確定し行方不明者がいる場合の捜索方法として戸籍の附票を使って移転先住所を確認します。
戸籍の附票とは、本籍地の市町村において戸籍の原本と一緒に保管している書類で、その戸籍が作られてから(またはその戸籍に入籍してから)現在に至るまで(またはその戸籍から除籍されるまで)の住所が記録されています。

移転先の市町村で転居届を出した場合は必ず戸籍の附票に記載されますので、この方法でほぼ特定できます。しかし居候やホームレス等になっている場合はこの方法では所在を特定できません。

所在不明者の居所が捜索しても分からない場合

相続財産管理人の選任を家庭裁判所にの申立てをします。
不在者財産管理人は「不在者の従前の住所地または居所地の家庭裁判所」へ申立をして選任してもらいます。申立権者は配偶者や相続人、債権者などの利害関係人、検察官です。不在者財産管理人は、居場所がわからない本人のために適切な方法で本人名義の財産を管理します。また、不在者の財産について目録や収支報告書を作成し、定期的に裁判所へ報告すべき義務を負います。本人の利益にならない方法で勝手に財産を使うことは許されません。
不在者財産管理には利害関係のないものでしたら候補者にできます。適切な人がいなければ弁護士や司法書士などの専門家がなることが多いです。

上記のように選ばれた不在者財産管理人とともに相続人は、遺産分割協議をし遺産分割を行います。ただしこの不在者財産管理人は不在者の財産や権利を守る立場にあり、法定相続分より少ない割合で合意することはまずありません。

以上のように相続人の中に所在不明者がいると遺産分割協議を始めるまでにかなりの労力を要します。日頃から親族との交流を絶やさないことは重要ですが、もし所在不明者がいる場合には各種専門家を頼ることも良いのではないでしょうか。

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