不倫相手に財産を残したい
妻と子供がいて別に交際する不倫相手がいます。遺言によってその彼女に財産を残すことができますか?
場合によっては作成した遺言は無効とされる場合があります。下記裁判例では無効とされました。
東京地裁昭和58年7月20日
「右認定によれば、亡Aと補助参加人とは不倫関係にあったものであり、本件遺言んがなされたときは両者間に右関係が生じて間もないころであって、亡Aは右関係の継続を強く望んでいたが、補助参加人はむしろそのことに躊躇を感じて時期に符号すること、当時50歳の初老を迎えていたAが、16歳年下の補助参加人との関係継続するためには、財産的利益の供与等により補助参加人の歓心を買う必要があったものと認められること、本件遺言後両者の関係は親密度を増したことなどの諸事情を考え合わせれば、亡Aは補助参加人との情交関係の維持、継続をはかるために、本件遺贈をなしたものと認めるのが相当である。そして、本件遺贈は、被告Yが居住する居宅である前期建物及びその敷地である土地を含む全財産を対象としており、それは長年連れ添い、亡Aの財産形成にも相当寄与し、しかも経済的には全面的に夫に依存する妻の立場を全く無視するものであるし、また、その生活基盤をも脅かすものであって、不倫な関係にある者に対する財産的利益の供与としては、社会通念上著しく相当性を欠くものといわざる得ない。したがって、本件遺贈は、公序良俗に反し無効というべきである」
上記裁判例では、夫は不倫相手に全財産を不倫相手に相続させる遺言を作成し、結果的には無効と判決されました。ポイントは下記にあります。
- 遺言の目的が不倫関係継続の目的とされたか
- 相続人に生活基盤を脅かさないか
その後の下記最高裁判例では不倫相手に対する包括遺贈が有効とされた判例です。
昭和61年11月20日最高裁
「亡Dは妻である上告人A1がいたにもかかわらず、被上告人と遅くとも昭和44年ごろから死亡時まで約七年間いわば半同棲のような形で不倫な関係を継続したものであるが、この間昭和46年1月ころ一時関係を清算しようとする動きがあったものの、間もなく両者の関係は復活し、その後も継続して交際した、被上告人との関係は早期の時点で亡Dの家族に公然となっており、他方亡Dと上告人A1間の夫婦関係は昭和40年ころからすでに別々に生活する等その交流は希薄となり、夫婦としての実体はある程度喪失していた、本件遺言は、死亡約1年2か月前に作成されたが、遺言の作成前後において両者の親密度が特段増減したという事情もない、本件遺言の内容は、妻である上告人A1、子である上告人A2及び被上告人に全遺産の3分の1ずつを遺贈するものであり、当時の民法上の妻の法定相続分は3分の1であり、上告人A2がすでに嫁いで高校の講師等をしているなど原判示の事実関係のもとにおいては、本件遺言は不倫な関係の維持継続を目的とするものではなく、もっぱら生計を亡Dに頼っていた被上告人の生活を保全するためにされたものというべきであり、また、右遺言の内容が相続人らの生活の基盤を脅かすものとはいえないとして、本件遺言が民法90条に違反し無効であると解すべきではないとした原審の判断は、正当として是認することができる。」
以上のように不倫相手に対するな遺贈は、遺言の目的が不倫関係継続の目的とされたか、相続人に生活基盤を脅かさないかとう点において侵害していれば公序良俗違反となる恐れがあります。ですからその点を考慮して遺言を作成する必要があります。