90代の祖母が遺言を書いてくれない場合、相続土地国庫帰属制度の検討
ご質問頂きました。私には95才の祖母がいます。祖母は自宅土地と農地を多数もっています。しかし相続人に農家はおらず相続人はみな相続したくないと言っています。祖母が亡くなる前に遺言でどうにかならないでしょうか?
長谷川式認知症スケール
95才の祖母は会話はできるものの物事を正確に理解しているかわからない状況とのことでした。また、自力で文字を書くことができない状態のようです。その場合公正証書遺言となり、認知症の疑いがあると遺言者の判断能力の有無を確認する必要があります。その際に公証役場から長谷川式認知症スケールを受けるよう求められる場合があります。
ですから事前に長谷川式認知症スケールを受けて遺言を作成できるレベルか確認するのも良いでしょう。
遺言が作成できず相続人に祖母の財産が承継される場合は下記の対策を検討します。
農地がどのような場所にあるか確認する
農地は農地法により管理されており、売買、賃貸等において農業委員会の許可が必要な場合があります。農地には1種から3種まであり、農業を振興していくべき地域の農地は、原則農家以外がその農地を所有又は賃貸等の利用ができない仕組みになっています。
祖母の所有している農地がどのような場所にあるのか、法務局にて登記簿を取得し、それをもって農業委員会に農地の種別を確認しましょう。なかには農地から宅地への転用ができる場合もあり、その場合一般の方に土地を売却することが可能です。
国庫帰属制度
令和5年4月27日から相続土地国庫帰属制度が開始されます。土地が管理できないまま放置されることで、将来、「所有者不明土地」が発生することを予防するため、
相続又は遺贈(遺言によって特定の相続人に財産の一部又は全部を譲ること)によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とするものです。下記に国庫帰属制度のポイントをまとめました。
- 相続によって取得した土地について国庫帰属制度を利用できます。
- 国庫負担負担金が必要で一筆20万円が基準となっている
- 申請手数料は14000円
- 土地に建物があると承認されないため建物は解体撤去の必要がある
- 国庫帰属が認められない場合もある
- まずは法務局に相談する
仮に95才の祖母が遺言を作成しない場合は、財産は相続人の共有となり遺産分割協議により所有者が決まります。その際に不要な土地については上記の国庫帰属制度を検討することも可能です。
その他の不用土地の処分方法
- 相続放棄
- 地方公共団体等への寄附
- 民間売買・贈与
- (農地の場合)農地中間管理機構の利用
- (森林の場合)森林経営管理制度の利用
農業委員会に相談
不要な農地は農家に売却又は賃貸、贈与することも検討します。その際に農地によっては農家しか取得できないため農業委員会にて農地を求めている農家がいないか問合せするのも良いでしょう。
太陽光パネル業者へ売却
農地によっては農家以外に売却できる場所もあります。その際太陽光パネル業者への売却も検討します。現在国策による太陽光事業があり売電価格はさがったものの依然として、太陽光事業のための土地をもとめている業者があります。ですのでその土地が農地転用できる場所であれば業者への売却も検討できると思います。