農地を3人で相続し農家の長男に貸すことは可能か
相続財産に農地3筆以外にほとんど財産が無く、3人兄弟で1筆づつ相続し、唯一農業をしている長男に貸すことはできるのか検討します。
農地法3条許可が必要か? A.許可不要 届出必要
農地法第3条が適用される場面は、「農地または採草放牧地について所有権を移転し、または地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権もしくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、もしくは移転する場合」とされています。ただし農地法3条1項12号に「遺産の分割、民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百六十八条第二項(同法第七百四十九条及び第七百七十一条において準用する場合を含む。)の規定による財産の分与に関する裁判若しくは調停又は同法第九百五十八条の二の規定による相続財産の分与に関する裁判によつてこれらの権利が設定され、又は移転される場合」
つまり相続による農地の取得は農地法3条許可は必要ありません。
しかし、農地法第3条の3第1項は、相続等による農地の権利取得の届出が必要です。
平成21年12月15日から、相続等により農地の権利を取得した方は、農業委員会にその旨を届出することが必要となりました。登記地目もしくは現況が農地の場合、届出が必要です。
届出をしない場合や、虚偽の届出をした場合は、10万円以下の過料に処せられることがあります。
農地の賃貸借契約は可能か? A.農業委員会の許可が必要
農地について、賃貸借契約を締結するには、農業委員会の許可が必要となります。この許可は、当事者間の法律行為を補充し、その法律上の効力を完成させる行為とされています。したがって、農地法3条による許可のない賃貸借契約は無効です。ですから今回の場合は農業委員会の許可が必要となります。
農地の賃貸借の農地法3条許可申請
3条の許可要件は主に4つ 下記満たす必要があります。
- 全部効率要件 農地を効率的に利用することが必要です。
- 農作業常時従事要件 原則年間150日以上農作業が必要です。
- 下限面積要件 50a以上の面積を農業んい供する必要があります。
- 地域との調和要件 地域における農業の効率的、総合的な利用の確保に支障を生ずる恐れがないと認められる必要があります。
上記は古河市農業委員会の申請書の一部です。このように申請書に譲り受け人と譲り渡し人の住所氏名職業を記載し、許可を受けようとする土地の所在、契約内容を記載し申請します。
次に申請書と共に添付する書類です。
- 委任状:代理人による申請の場合、申請書と同一印
- 登記事項証明書:全部事項証明書に限り、申請日以前3ヵ月以内のもの
- 耕作証明:市外に耕作地がある場合
- 住民票抄本:譲受人が市外在住者の場合
- 契約書の写し:農業生産法人以外の法人及び農作業常時従事者以外の個人の場合は、 農地法第3条第3項(解除条件付)に規定する条件が記載されたもの
- 法人の場合:法人の登記事項証明、定款の写し、その他法令等に定める書類 ※農業生産法人の場合、所有権移転の添付書類と同じになります。
- 付近状況図・公図:付近状況図は、縮尺1500分の1~3000分の1
- 誓約書:「農地の権利移転(設定)に関する誓約書」
- 借受地の場合:借受地の場合借受人の耕作意向書(様式1-4)
- 作付け計画書:譲受人が新規の就農者又は農業生産法人、市外在住者の場合
- その他:土地改良法に基づく一時利用地の指定がなされている場合は、一時利用地の指定通知書の写し等、必要と思われる書類
以上、3条許可申請手続きです。上記を農業委員会に提出し許可がおりれば農地を賃貸することが可能になります。農業委員会の許可なく賃貸は無効ですので気を付けてください。