弟が亡父の家に住み着いて税金も滞納
父が住んでいた家はかなり老朽化していて、兄弟の誰もが相続に乗り気ではなかった為、遺産分割協議も相続登記もしないままでいたところ、弟がその自宅に住み着いていました。最近になって固定資産税を滞納するようになり、私に固定資産税の納税通知書が届くようになりました。私は支払い義務はあるのでしょうか?
結論:兄弟に支払い義務あり
父名義の不動産の固定資産税支払い義務者
不動産の固定資産税は当該年度の1月1日の所有者に課税されます。しかし今回のケースですと不動産の所有者は亡き父のままとなっています。この場合市役所などとしては亡き父の相続人資格者に対して、「相続人代表者指定届書」の提出を促すものの、当初は弟が自宅に届く固定資産税の支払いをしていたものと思われますので、その不動産の上記指定書の届出を促したりはしません。
しかし、最近になって固定資産税が滞納状態になり、役所としては滞納状態を解消するため、他の相続人がいたため滞納通知書をあなたに送ってきたものと思います。弟が使用している不動産のですがその名義上は亡き父のままでありその不動産の権利は弟だけのものではありません。抽象的には相続人資格者の法定相続分に応じた共有状態となっており、相続人全員にその法定相続分に応じた支払い義務があるのです。
従って役所としては滞納状態になれば、登記名義人の相続人資格者を調査して、その相続人らに支払いを促すこととなります。
なお、相続開始後、さらにその相続人について相続が開始した場合であっても相続人の相続人も法定相続分に応じて権利義務を承継しますので、固定資産税支払い義務を負います。
弟に居住する権利はあるのか?
亡き父の子である弟は被相続人の相続人としてその不動産について「共有持分権に応じた使用収益を得る権利」を有します。したがって共有持分権の一部しかなくても、使用収益権が認められている以上、他の相続人が立ち退きを求めても認められません。
ただし弟は不動産を一人で独占しており、他相続人の共有持分権を侵害しています。ですから賃料相当額を請求することはできます。
結局のところ法定相続分を有する相続人には持分に応じて使用収益する権利が認められていますので、その結果として税の支払い義務もあることになります。
まずは遺産分割協議において相続人全員で、その不動産の所有権を誰が相続するのか決める必要があります。その不動産がどれほどの価値があるか分かりませんが、建物自体は老朽化しているとのことですので、価値はないとしても土地に財産的価値があれば安易に弟に相続させようとはならないでしょう。
おそらく弟の経済状況は良くない状況ですので、どこかに引っ越してもらうのもかなり難しいものと思われます。法律的には共有物分割請求で競売などの手段も考えられますが、兄弟である以上弟に対する扶養義務がありますので仮に自宅から出ていかせたとしても、その後に問題が発生してまた、兄弟に連絡がきて世話をしなければならない事態になることも考えられます。法律一辺倒に相手を追い込んでも親族である以上、それらが返ってくることがあるので要注意です。
現実的対応としてどのような手段が考えられるか
まず法律一辺倒で弟を追出すのは得策とは思えません。おそらく生活に窮していると思われる弟を追出せば、ホームレスや犯罪行為に至ることも想定すべきです。昨今、家族の縁が希薄になっていますが、余力のない人間に追い打ちをかける行為は慎むべきと考えます。今回とは違い生活力のある者が居座る場合は法律で解決可能ですが、すでに生活に窮しているものには下記のアプローチをお勧めします。
- 弟の金銭的事情、健康と精神状態、本人の意向などを聞きその状態によって対応が変わります。
- 上記の状態によっては福祉課と相談、生活保護も検討
- 労災や障碍者年金の対象者であればその手続き
- 就労可能であればその支援
上記の検討しそれらを加味して遺産分割協議を行うのが良いと考えます。法律家によっては強硬手段をすすめる方もいますが、今一度あなたがどのような解決を望むのか考えてみることが必要です。