相続させたくない場合どうすればよいか
家族の関係上時にはに財産を相続させたくないという場合もあります。
相談者A様男性は、長男との仲が悪くまた何年も疎遠で居所も分からない状態とのことで財産を相続させたくないという事でした。
相続において相続人に相続さない制度があります。
1.相続人の欠格事由
- 故意に被相続人、自分以外の相続人を死亡させ、または死亡させようとして刑に処せられた者
- 被相続人が殺害されたことを知りながら、告訴、告発をしなかった者
ただし、その者に是非の弁別がないとき(まだ子供の場合など)、または殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族(子、孫、親、祖父、祖母)であった場合は、例外です。 - 詐欺や強迫により、被相続人が相続に関する遺言を作成・撤回・取消し・変更することを妨げた者
- 詐欺や強迫により、被相続人に相続に関する遺言を作成・撤回・取消し・変更させた者
- 相続に関する被相続人の遺言書について偽造・変造・破棄・隠匿した者
2.相続人の廃除
遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待をし、重大な侮辱を加え、又は推定相続人にその他著しい非行があった時は、相続人の廃除を家庭裁判所に請求できます。
遺留分の無い相続人に対しては遺言を作成すればよいので遺留分の有する推定相続人のみ対象となっています。
廃除事由の存否の判断
廃除事由の存否の判断は「相続的共同関係破壊の可能性」を基準として判断されるとしていますが具体的判例を見ていきます。
高裁平成4年12月11日 暴力団員と婚姻し、父母が婚姻に反対なのに父の名で披露宴の招待状を出すなどした娘に対して廃除を認容した裁判例では、娘は小学生低学年から家出・万引等の問題行動を起こし中学高校を通じて、家出怠学不良交遊を繰り返し、少年院送致を含む多くの保護処分を受けた、その後暴力団員と同棲、婚姻した。娘は両親が結婚に反対していることを知りながら父の名前で結婚披露宴招待状を両親の知人に送付した。
それに対し裁判所は民法892条にいう虐待又は重大な侮辱は、被相続人に対し精神的苦痛を与え又はその名誉を棄損する行為であって、それにより被相続人と当該相続人との家族的協同生活関係が破壊され、その修復を著しく困難ならしめるものをも含むものと解すべきである。このような一連の行動について親として最善の努力をしたが、その効果はなく、結局娘は家族にたいする帰属感をもつどころか、反社会的集団への帰属感を強めかかる集団である暴力団の一員であったものと婚姻するに至り、しかもそのことを両親の知人にも知れ渡るような方法で公表したものであって、これら一連の行為により両親が多大な精神的苦痛を受けた、またその名誉が毀損されその結果、家族的共同生活関係が全く破壊されるに至り今後もその修復が著しく困難な状況となっているといえるとしました。
親の意に添わない婚姻について多くの学説では、著しい非行とはならず上記裁判において決め手になったのは、父の名前での披露宴招待状の発送であったのではないかと思われます。
著しい非行について一般的基準を設けることは難しが裁判例からいうと、犯罪行為、浪費、被相続人に対する金銭的迷惑、遺棄、不貞等が該当すると考えられる。しかし、裁判例によっては必ずしも上記の件があっても必ずしも廃除が認められるとは限らないため判断は難しいように思います。
遺言で相続人を指定する方法
遺言は、あなたが自分の財産を誰にどのように残したいかを決定するための重要な手段です。したがって、特定の人に財産を相続させたくない場合、遺言を作成し、誰に財産を相続させるかを指定することが出来ます。
遺言には大きく分けて自筆証書遺言と公正証書遺言がありそれぞれメリットデメリットがあります。
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文、遺言書の作成日付および遺言者氏名を自書し、押印して作成する遺言書のことを指します。遺言者が全文を手書きで作成する遺言のことを指します。
自筆証書遺言の作成には以下の要件が必要です。
- 遺言者本人が遺言書の全文を自署すること
- 遺言者本人が作成日付を自署すること
- 遺言者本人が氏名を自署すること
- 遺言者本人が自筆証書遺言に押印すること
また、自筆証書遺言の訂正(変更)についても以下の要件が定められています。
- 訂正(変更)の場所を指示して、訂正(変更)した旨を付記すること
- 訂正(変更)を付記した箇所に署名すること
- 変更(訂正)した箇所に印鑑を押すこと
- 上記の訂正(変更)が遺言者自身によって行われること
自筆証書遺言は自分で気軽に作成でき、費用がかからず、遺言の内容を秘密にできるというメリットがあります。ただし、要件を満たしていないと無効になる恐れがあり、紛失や、死後に相続人が見つけられない恐れがあります。また、書き換えられたり、隠されたりするリスクもあります。
なお、2020年からは自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度が開始されています。この制度を利用すると、遺言書の紛失や隠匿などを防止でき、遺言書を発見してもらいやすくなります。費用は、1件3900円です
ただし、日本の法律では、配偶者や子供などの法定相続人に対して一定の相続権が保証されています。これを「遺留分」と呼びます。したがって、遺言によって遺留分を侵害することはできません。
公正証書遺言とは、公証人が作成する遺言書のことを指します。公証人は法務大臣に任命された公正証書の作成者で、高い法律知識と豊富な法律実務経験を有することが求められます2。
公正証書遺言の作成には以下の手順があります
- 遺言内容のメモ書きを作成します。
- 公証役場に相談日時を予約します。
- 公証人と相談します。
- 証人を用意します。
- 必要書類を準備し、公証役場に郵送または持参します。
- 作成日当日に遺言書の内容を確認し、署名・押印を行います。
- 正本と謄本を保管します。
公正証書遺言のメリットは以下の通りです
- 遺言が無効になるリスクが少ない
- 遺言を紛失するリスクが少ない
- 遺言が偽造されるリスクが少ない
- 自分で遺言を書く必要がない
- 遺言の検認が必要ない
しかし、公正証書遺言にもデメリットがあります2:
- 証人が必要になる
- 費用がかかる
- 時間がかかる
以上のような特性と要件を理解した上で、公正証書遺言を作成することが重要です。