母の死亡後、遺産分割終了後に相続人が明らかになった場合

2023.03.20
相続

母が死亡し遺産分割終了後に新たな相続人が発覚した場合どうなるのか?また、その相続財産を購入した第三者はどうなるのか?

裁判例

被相続人の母AにはB女、X女、C女(非嫡出子)がいたところ、A、BはD夫婦の子として、CについてはE夫婦の子として出生届がなされた。その後XはH夫婦と、CはAと養子縁組をした。
(この時点においてCは戸籍上Aと親子関係が分かるが、B、Xは戸籍から親子関係を知ることができない。)

Aが死亡し、Cは母を同じくするBとXのいることを知りながら、戸籍面では自己が唯一の相続人になっていることを利用して、BとXの了解を得ることなく、Aの遺産である不動産について、事故単独の相続登記を経た後、売却しはじめた。そこでXは、検察官を被告として、Aと母子関係存在確認の訴えを提起しX勝訴の判決を得た。Aの不動産はYらが賃借していたが、Cから売渡の申込をうけ、Aの相続人が他にもいることを全く知らず、Cが登記簿記載どおり本件土地を単独相続したものと信じて、これを買い受け、移転登記をした。
その後XはYがCから譲り受けた土地について、Xが持分を有することの確認とその更生登記を求めた。
一審ではXが全面的に認められ、二審では次のように述べられた。
「右のようにXとBは戸籍上亡Aとの親子関係の表示がなかったのであるから、Yらが戸籍簿によってXとBの相続権を知ることは絶対に不可能であったものといえる。もとより戸籍上の記載がどうあれ、母子の法律関係は出生により当然に生じXとBが亡Aの分娩した子である以上出生届の有無にかかわらず子として相続人となるのであるから、その相続権は尊重されなければならない。しかしながら、戸籍上他に相続人がいることを覚知する方法もなく、戸籍上の相続人から不動産登記簿の記載を信じて遺産の譲渡をうけた第三者の保護もまた、無視さるべきではない。要はそのいずれかの利益を優先させるのが正義公平の理念に合致するかにある。
ところで民法七八四条は認知の効力は出生の時にさかのぼるとしながら、その反面第三者がすでに取得した権利を害することはできないと規定している。そして死後認知等のの場合、被認知者の相続権が有名無実になることを防ぐため、同法九一〇条によって相続開始後に認知によって相続人となった者は遺産分割の請求をすることができることにし、他の共同相続人がすでに遺産分割その他の処分をしたときは、これらの者にたいして、価格償還請求をすることができる旨規定する。これらのキレイは、相続開始当時存在していなった相続人(被認知者)の後日の出現によっても、共同相続人以外の第三者の権利はあくまで保護されるべきことを前提とし、その権利を侵害しない限度で被認知者の相続権を保護する趣旨に出たものであることが明らかである。
いうまでもなく、親子関係存在確認の判決により確認される親子関係は、すでに発生し客観的に存在していた親子関係を明確にするものにすぎず、届出又は裁判によってはじめて親子関係が形成される認知とは異なるが、第三者の側から見れば、後日認知者が出現することと、戸籍上覚知することの不可能な相続人が後日出現して相続権を主張することとの間に、不測の損害を受ける度合いにおいて何らの際はないものというべきである。また、戸籍上の相続人が遺産を処分する恐れがある場合、戸籍上に表示されていない他の共同相続人は民訴法上の保全処分等の手続きによってこれを防止する方法がのこされているのに反し戸籍上の相続人から遺産の譲渡をうける善意の第三者は、戸籍に表示されていない他の相続人の出現による事故の損害を防止する手段が全くない。これらのことを考えれば戸籍上に表示されていない相続人の存在が後日明らかになった場合も、認知の場合と同様に第三者の利益を保護すべき必要がある。したがって、右の場合には第三者の利益を優先させるとともに、戸籍上表示されていない相続人に対しては、戸籍上の相続人に価格償還請求をさせることによってその救済を図ることが、公平の理念に合致するものというべきである。以上要するに、戸籍上の相続人から遺産の譲渡をうけた善意の第三者は、被認知者以外でその当時戸籍上知覚することの不能であった他の相続人の存在が後日明らかになったとしても、民法七八四条但書九一〇条の法意の類推適用により保護されるべきであって、第三者に対し、当該他の相続人はその持分についての権利取得の無効を主張することができないものと解すべきである。」

要約すると認知の場合を類推適用して第三者が保護されるとしました。

これにXは上告し

「原判決は、明らかに認知と関係なき身分関係にある母子の相続につき、適用等の余地のない民法七八四条但書を、強いて、類推適用した違法がある。最高裁昭和37年4月27日によると「母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知を俟たず分娩の事実により当然発生すると解する」と判示されており、かつ、右の原則に対する例外的場合についても、少なくとも、右最高裁判決が他の摘出子として虚偽の出生届がなされているような場合は、この例外的場合に該らないとするものであることがあきらかに看取されているのであって、本件の母子の身分関係について、相反する認知に関する規定の類推適用等の及ぶ限りではない。
 そして、本件事案の如くに、遺産たる不動産につき、複数の共同相続人のうちの一部の者が、ほしいままに単独相続したように登記をした以上、他に処分した場合は、その余の相続人は、右の一部の者が自己の相続分を超える部分については無権利者であるから、第三者と取引しても、その部分に関する限り無権利者であって、たとえ登記があってもその部分については効力がないのは民法上当然の理であり、従って、右の、その余の相続人に当る上告人は最高裁昭和38年2月22日において判示される如く、単独所有権移転の登記をなした共同相続人中の一部の者、及び、これから移転登記を受けた第三取得者に対して、自分の持分を登記なくして対抗し得ると解すべきは当然である。」

要約すると母子間は出生により当然に発生するから、認知の規定は及ばない、だから単独登記したとしても相続分を超える部分は無権利であり、無権利者から取得した部分についてはたとえ登記していなくても自分の物だといえる。

判決

「相続財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人は登記をした共同相続人の一人及び同人から単独所有権移転の登記をうけた第三取得者に対し、他の共同相続人は登記を経なくとも相続による持分の取得を対抗することができるものと解すべきである。けだし(なぜならば)、共同相続人の一人がほしいままに単独所有権移転の登記をしても他の共同相続人の持分に関する限り無効の登記であり、登記に公信力のない※結果第三取得者も他の共同相続人の持分に関する限りその権利を取得することはできないからである。そして、母とその非摘出子との間の親子関係は、原則として、母の認知をまたず分娩の事実により当然に発生するものと解すべきであって、母子関係が存在する場合には認知によって形成される父子関係に関する民法七八四条但書を類推適用するべきではなく、また、同法九一〇条は、取引の安全と被認知者の保護との調整をはかる規定ではなく、共同相続人の既得権と被認知者の保護との調整をはかる規定であって、遺産分割その他の処分のなされたときに当該相続人の他に共同相続人が存在しなかった場合における当該相続人の保護をはかるところに主眼があり、第三取得者は右相続人が保護される場合にその結果として保護されるにすぎないのであるから、相続人の存在が遺産分割その他の処分後に明らかになった場合については同法条を類推適用することができないものと解するのが相当である。
 本件についてこれをみると、原審が適法に確定したところによれば、Aには、B、X、Cの三子があったところ、B及びXについてはDとその妻Eの三女及び四女としてCについてはFとその妻Gの長女として出生届がされ、Cはその後実母Aと養子縁組をしたので、A死亡により、B及びXは非嫡出子として、Cは養子として本件各土地を含む遺産を共同相続したのであるが、Cは戸籍上では自己が唯一の相続人になっていたことから、X及びBの了解を得る事なく、本件各土地について自己単独の相続登記を経たうえ、Cの単独所有であるものと信じていたYらに本件各土地を売り渡したものであり、他方、XはAの死亡後検察官を被告としてAとの間の母子関係存在確認の訴を提起し、Xが勝訴の判決が確定した。右事実関係のもとにおいては、Yらは、民法七八四条但書、九一〇条の類推適用によって、保護されるべきものではなく、X及びBにおいてCの単独所有権の登記の作出について有責である場合に民法九四条二項の類推適用によって保護される余地があるにとどまるものと解すべきものである。しかるに、原審が民法七八四条但書、九一〇条の類推適用を認め、Yらは保護されるべきものとしてXの請求を棄却したのは、民法七八四条但書、九一〇条の解釈を誤り違法をおかしたものというべきであり、その違法は結論に影響を及ぼすことが明らかである。」

要約結論:公信力ない登記によって取得した第三者には共同相続人の持分について無効であり、取得できない。母子関係は認知の類推はできず、民法九一〇条は相続人の既得権と被認知の保護を調整するためのものでこちらも適用されない。ですからYらは保護されないとなりました。

※不動産の登記簿に記載された内容に効力が生じることを公信力といいます。日本の登記制度では、記載された内容は一般的には正しいのですが、真実の権利関係と登記の記載とが異なっているときは、仮にその記載を信用しても、これを保護することができないのが原則です。つまり、登記簿の記載より真実の権利関係を優先させるわけです。

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