相続人全員の共有不動産となったが一部の者が占有しているとき

2023.03.20
相続

遺産分割によって被相続人の所有していた不動産が相続人全員の共有になったが一部の者が占有して他の相続人が使用できない場合どうするのか。

最高裁平成8年12月17日

被相続人Aが死亡し、不動産(建物・土地)をXら5名、Yら2名の共有となった。その後、本件不動産の分割について協議がなされたが調わず、XらはAとともに本件建物に居住して家業を営んできたYらに対し、共有物分割ならびに賃料相当額の損害金の支払いを請求して本訴を提起した。

「共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人のと同居してきたときは、特段の事情がない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。けだし、建物が右同居の相続人の居住の場であり、同人の居住が被相続人の許諾に基づくものであったことからすると、遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが、被相続人及び同居の相続人の通常の意思の合致するといえるからである。本件についてこれを見るのに、Yらは、Aの相続人であり、本件不動産においてAの家族として同人と居住生活をしてきたというのであるから、特段の事情のない限り、AとYらの間には本件建物について右の趣旨の使用貸借契約が成立していたものと推認するのが相当であり、Yらの本件建物の占有、使用が右使用貸借契約に基づくものであるならば、これによりYらが得る利益に法律上の原因がないということはできないから、Xらの不当利得返還請求は理由がないものというべきである。」

判決はYらとAとの間に生じた使用貸借契約がA死亡によりXらを貸主として引き続き使用貸借関係が成立し、遺産分割までの間は引き続き無償で使用可能としました。これは物件法による共有規定ではなく被相続人との間の合意に基づく使用貸借関係とするこにより、妨害排除、不当利得の問題も生じないこととしました。

Yらは遺産分割までは無償でその不動産に居住できるということです。

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