子がいない夫婦の遺言、相続
子供がいない夫婦の場合、遺言が無ければ、配偶者のどちらかが亡くなった場合、その相続人は配偶者、親または兄弟姉妹なります。配偶者から見ればなぜ家計が一緒でない被相続人の親や兄弟姉妹が相続人になるのか不思議な気持ちになるかと思います。
相続割合は親1/3、兄弟姉妹1/4となっています。
トラブルの可能性が高くなる
配偶者と義両親あるいは義兄弟姉妹が相続人となると、残された配偶者は、義両親や義兄弟姉妹と遺産分割の話し合いをしなければなりません。
しかし、義両親や義兄弟姉妹との関係が悪い場合、話し合いがまとまらないことがあります。また義兄弟姉妹と長年疎遠だった場合には、義兄弟姉妹と連絡をとること自体が難しく、トラブルになる可能性はより高くなります。
相続財産の不動産の処理
相続財産に占める割合に不動産が大きい場合トラブルになりやすいです。といいますのも、特に義兄弟との間で不動産を共有したりあるいは、代償分割によって不足分を義兄弟等に支払うのは、被相続人とともに財産形成した配偶者としては納得いかないものです。
遺言書の作成
子のいない夫婦においては特に遺言書の作成をお勧めします。前述のとおり遺言を残さなければ被相続人の親、兄弟姉妹が相続人になるからです。義両親や義兄弟に財産を残したい人は別ですが、ほとんどの場合、被相続人とともに築いた財産を渡したい人は少ないと思います。遺言書で配偶者に全ての財産を相続させる遺言を作成しておきましょう。
遺留分
遺言を作成しても法定相続人には遺留分があります。遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことをいいます。義両親1/6 義兄弟遺留分無し 兄弟姉妹には遺留分はありませんので気にせず遺言を作成できます。
対策
遺言書作成とともに生前贈与の対策になります。特に自宅と土地を相続したい場合です。結婚後20年以上の夫婦の間で居住用の不動産を贈与する場合、基礎控除の110万円に加えて、最高2000万円まで贈与税の課税価格から控除されます(贈与税の配偶者控除)。簡単にいえば、評価額(相続税評価額)が2110万円以下の不動産を贈与するのであれば、贈与税はかかりません。生前に贈与することにより相続が開始しても相続財産となりません。
遺留分の懸念がある場合は生命保険に加入することで、その遺留分の支払いに充てることができます。生命保険の受取人が指定されている場合、例えば妻を受取人とした場合、被相続人が死亡しその生命保険金を取得してもそれは受取人固有の財産として遺産分割の対象になりません。ですからそのお金を遺留分を主張する相続人への支払いとすることも対策として有効です。特に相続財産が自宅と土地のみの場合に代償金を支払う手立てがない場合保険契約していることでスムーズに分割協議が進むものと思います。
最後に残された妻
無事、遺言により夫と築いた相続財産を全て妻が相続した後についても考えていきます。
子のいない場合ですのでその妻が亡くなった後その財産はだれの物になるのでしょうか。
妻の両親、兄弟姉妹、甥姪となります。特に多いケースでは兄弟姉妹と不仲で兄弟姉妹に財産が相続しにようにしたいという場合です。
このような場合も、遺言書を作成する必要があります。先ほどの通り兄弟姉妹には遺留分がありませんので遺言によって防げます。法定相続人に相続させたい人がいない場合、お世話になった人などを遺言で指定することも良いのではないでしょうか。
しかし、不動産などの換価しづらいものを遺贈する場合は注意が必要です。特に地方などでは全く流動性のない不動産も存在し、売ろうにも売れない不動産があるからです。ですからお持ちの不動産がどのような価値があるのか、検討しておくことも必要と思われます。
また、遺言によって知人や団体に遺贈を指定しても、遺贈の放棄されることもよくあります。法定相続人に配慮して遺贈放棄する場合や、前述のように不動産など現金化までに手間がかかるものについては放棄される可能性が高くなります。ですから事前に受遺者にその意思を確認することも必要になります。